2018.10 福島999便(原発視察)有志便 報告

実施団体の会員として、当会有志7人が「東京電力福島第一原子力発電所」の視察研修に参加し、それぞれに感じたことについて報告を頂いた。

 

感じたことは、それぞれの個人が見たこと、聞いたこと、感じたことである。

個人の感じたことの記録であることを理解のうえでご参照ください。


(参加者1)

・自分が生きてきた中で福島原発の事故があり、原発ってどんなものか、事故の様子はどうなのか?自分の眼で見ておきたい。という思いを持っていたので、今回この機会に参加させていただいた。

 

・原発の構内に入ることに少し緊張もあった。防護の装備も必要と思っていたのに、現場の方が何もなしで歩いていたのには少し驚いた。木を伐採したり、地面をモルタルで固めて除染がされていた。ここまでする必要があるんですね。

 

・原発の建屋は思っていたよりも小さく感じました。バスの中からみた限りでは、報道されているのとほとんど変わりなく、余り進んでいない印象でした。7年半もたってこんな状態なんですね。廃炉の困難さを実感し廃炉への道は本当に遠く感じた。作業員の方の多さも少し驚き、ご苦労も感じた。

 

・増え続ける汚染水の放射能や処分方法も、まだ決まっていない。廃炉によって出る高濃度の廃棄物、周辺各地に山積みされた放射性廃棄物の最終処分等、改めて原子力が人間にコントロール出来ないものとの思いを強くした。

 

(参加者2)

・視察について

福島第一原発は、基本的に廃炉関係者のみ視察を受け入れており、一般の視察は不可。地元のちゃんとした団体、議員、外国人(専門家や議員などVIP)の視察は受け入れている。今回の視察は普通では出来ない貴重な機会であった。

昨年の視察者は約1000名/月とのこと。

旧エネルギー館は、H30年12月より廃炉資料館として開館するとのこと。

最後の質疑応答の時、東電の視察担当者から“こちらの団体がどのような活動をしている団体かちゃんと確認するように”と上から言われている旨の話があり、威圧感を感じた。

 

・主な視察内容

東電の視察担当者3名に引率されて、構内をバス車内から視察。約50分。

 

(1)1~4号機の外観の特徴

・1号機:クレーン等の大物ガレキが使用済燃料プールの上を覆っており、大物ガレキの撤去作業が行われている。

・2号機:原子炉建屋最上部(オペレーティングフロア:オペフロ)の壁に穴を開けるための前室が壁の横に設置されている。オペフロの内部調査が始まったところ。

(2号からの放射能飛散が最も多く、オペフロ内部はかなりの高線量で内部状況が確認できていないためと思われる。)

・3号機:オペフロの壁と天井が撤去され、使用済燃料プールの上にドーム屋根が設置されている。燃料の取出しを始める準備段階で取扱機器のトラブルが起こり、現在解決に向け検討中。オペフロの下の階には散乱したガレキが見えた。

・4号機:オペフロの壁と天井が撤去され、建屋に負荷がかからないよう建屋の横から燃料取出用カバーで上部が覆われている。既に、全ての燃料を取出し済み。

 

(2)5,6号機の外観

水素爆発はなかったので、事故前の外観のまま。

 

(3)1,2号の共用排気筒

安全のため、排気筒の高さ約120mを半分に切断するとのこと。ベントに使用されたので排気筒内部は放射能汚染がひどく、除染が必要とのこと。

 

(4)原子炉建屋周辺の高線量

視察:除染が進んで、一般服で作業できる範囲が、1~4号機周辺道路も含めて構内の約96%になったとのこと。

但し、1~4号機の外観を見た視察場所③の線量は約50μSv/hr、2号と3号の間の道路上で200~300μSv/hrとかなり高いとのこと。

印象:「放射性物質がなく汚染しないので一般服で良い」のは事実だが、原子炉建屋内から出てくる放射線量は依然として高く、原子炉建屋周辺は被曝の観点からは危険のままである。

一般服の説明だけではこの状況はわからず、現場に行って初めてわかりました。溶けた燃料デブリの状態は何も変わっておらず放射線が高いままなのは当たり前ですね。

 

(5)1~4号の使用済燃料

視察:4号の使用済燃料は全て共用プールへ移送済。

1~3号の使用済燃料は、これから共用プールへ移送する。

但し、共用プールはほぼ満杯のため、以前から共用プールにあった使用済燃料を乾式キャスクに入れて別の場所で保管し、空いた共用プールのスペースに1~3号の使用済燃料を入れるとのこと。(帰ってから調べたところ、3号用のスペースは既に空いており、元あった使用済燃料は乾式キャスクに入れ他の場所で保管されていました。)

但し、共用プールに移した1~4号の使用済燃料は、六ケ所再処理工場には移さず福島第一で当面保管する、との方針があるだけで処分方法は未定とのこと。

印象:六ケ所で再処理できないのであれば、現状福島第一で保管しかありえません。

将来、福島第一が廃炉になり原子炉建屋が更地になっても、永遠に放射線を出し続ける使用済燃料は福島第一に在り続けるということであり、問題は解決しませんね。

 

(6)5,6号の使用済燃料

視察:水素爆発がなかったので建屋は健全であり、使用済燃料は各号機の使用済燃料プールで当面保管するとのこと。将来は未定とのこと。

印象:1~4号と同様、5,6号が廃炉となっても使用済燃料の問題は解決しませんね。

・その他

今回はほんとに貴重な機会でしたが、これからもこのような機会があれば参加したいと思いました。

なお、個人線量計の被曝量はゼロでした。

 

(参加者3)

・今回視察の機会があると聞いて、行ってきちんと見ておかなければと思い参加させていただいた。

 

・自宅にあえてテレビを置かない生活を10年以上続けていて、新聞も読まなくしている状態のため震災の状況やその後の復興の状態は自分が情報を入手したいと思ったときに

ひっぱってくるしかない状況で、正直原発についてはなるべく見ないようにしていた。

自分の出身県にも原発があり、関連の仕事をしている人が、親類や同級生にもいる。

自身の仕事でも未来のCO2に関して計算をする中で、原発がある未来しか描けない。

(人口と経済発展と地球の自然エネルギーの総量からすると、どうにもならずどうにかするためには戦争や感染症・飢饉など、大規模な人口減少が必須となり、もちろんそれを避けるためにも原発はあるのだと、頭では理解をしている)

 

・実際に行って思ったのは、本当に線量が高いということ。

個人のガイガーカウンターが高線量地区に入ったとたんに設定線量を超えてしまった(設定ミスアリ)。

機械をOFFにしたり、同行の方が持って行った線量計も20超えでなるものが原発内のバスの中でなったこと。

見てわからない何かに自分の周りが囲まれているという恐怖を、改めて感じた。

そしてその中で作業をしてくださっている従業員の皆様には本当に感謝するしかなかった。

 

・あれだけの被害があったのだから、原発はすごく大きいものだと勝手に思い込んでいたが(気持ち的には1つが東京ドームくらいある感じだった)

自分の入居する雑居ビルくらいのサイズで、本当にこのサイズのものがあの被害を出したのかと信じられない思いとともに、この大きさであれだけの電気を生み出せるのであれば原発政策がなくならず、誘致する自治体があることの意味を改めて知ることとなった。

本当に安全ならどんなによかったか、と思うとともに、本当に安全、がない中でどのような選択をしていかなければならないか、も考えていこうと思いました。

 

・行きかえりを知った人たちと一緒に行けたのが、今回本当によかった

特に何かを話し合ったわけではないですが、いつものバスのような感覚でなんとなくそれぞれが思っているだろうことを認め合いながらの空気で戻ることができたから。

たぶん一人で行って一人で帰ったら、もっと無力さを感じ、絶望的な気持ちになっていたのではないかと思う。

(参加者4)

・今回の視察で、改めて原子力発電反対の立場が強くなった。

原発事故から7年、決まったことは、1-6号機の廃炉にする事だけで、東京電力は、廃炉までの工程表も示せないのが現状。

手探りの廃炉作業が行われている感じで、膨大な費用や年月、人を費やしても安全に廃炉出来る保証は、東電の説明では難しいのではと思われる。

 

・1-3,5,6号機と共用プールには4号機のウラン燃料

残っており、再び、また、放射能漏れや爆発などの重大事故を起こしたら、人命及び日本の信用、日本経済に大きなダメージを与えると危惧している。

東京電力には、慎重の上にも慎重に廃炉作業の完了をお願いしたい。

災害が多い日本、事故が起きてからではもう遅い、こんな事故が二度と起きないように、原子力発電はすべて止めて廃炉にすべき。

 

(参加者5)

・本人確認について

事前の入構者名簿と同じ身分証明書の記載されたものを持参。本人確認できない場合は、構内には入れません。

服装は、長袖・長ズボンで、万一放射性物質の肌への付着を極力避けるため、肌の露出のあるものでは入構はできません。

等々多くが書かれ、不安と共に原発に行くことが複雑でした。

 

・「さくらモール富岡」で合流し、集合の旧エネルギー館へ向かうと、東電方4名(だったか)、待つように出迎えてくださいました。何か普段の見学と違う丁寧な姿勢に、ちょっとむず痒い感じがした。

 

・始めに、ビデオ視聴とお話で「津波による原発設備の被害状況と現状」を聞いた。原発の状況だけでなく、ニュースで耳にしていた汚染水対策、そして原発で働く人の作業環境改善に向け放射線量の低減を進めていることを聞いた。働く人の作業環境改善については、私にとって初めて教えられたことで、その通りだと思った。

 

・福島第一原子力発電所へは、旧エネルギー館富岡からバスで移動し、20分で到着。原発構内視察に入るときは、厳重なチェックと線量計の着用。出る時は、放射性物質による身体への汚染が無いことを確認するための体表面モニタを通過した。

福島第一原子力発電所構内の視察バスは、旧エネルギー館から乗ってきたバスでなく、原発構内だけの専用バスに乗り換えて視察をした。視察バスの中は、長袖・長ズボンの服装のままだった。東電の説明であった「構内は放射線量の低減により、一般作業服エリアを拡大しています。」ということを実際に実証しているように思った。

 

・視察バスは、原発四号機の下まで行き、更に第一号機から三号機まで進み車内で爆発した原発の写真を掲げ、現在の原発を見比べるように案内をしてくださいました。原発建屋を覆うドーム、クレーン、足場、あの事故から一般の私たちがここに入れるようになったことが凄いことだと思った。

 

・視察が終わり、旧エネルギー館に戻り、「溜まり続ける汚染水は、処理後海へ?」「浄化処理された浄化水として、…」のやり取りで、相手の微妙な違いを感じました。配布されたパンフレット「廃炉の大切な話2018」~タンクに貯めている水について~を読んで、『タンクに貯蔵された水に含まれるトリチウムは、私たちの飲む水道水にも、私たちの体内にも存在します。』この違い、お互い一歩下がったやり取りを感じた。

 

・東電が、視察を企画するのは、福島、被災者の方々への理解を広めるためと考えた。東電現場で働いている方々、それを支える方々のご苦労や努力は僅かですが理解でる。しかし、帰りの道々、バスの車窓から見える黒い山積みのフレコンパック、バリケードで塞がれた道、朽ちたままの建物、人の居ない街を見て、第一原発内の放射線量低減はあっても福島の人にとって気持ちは、まだまだと感じた。私自身、福島の方々との関わりが無いとどうしても遠くなっていく自分がある。「見る、知る、聞く、伝える」を常にと考える。

 

・原発視察に行くことになり、図書館に行っても原発についての本に目を向けるようになり、柳田邦夫著「想定外の罠」~大震災と原発~ に出会い読み始めた。

以上

 

最後に、関係の方々のご協力を感謝いたします。