福島県福島市大波で除染ボランティアに同行取材(転載)

かながわ東日本大震災ボランティアステーション 編集チームによる取材記事を、許可を得て転載させていただきました(画像を除きます)。ありがとうございました。

 

≪除染活動とは≫

5月18、19日、かながわ「福島応援」プロジェクト(kfop)の皆さんが福島県福島市大波での除染ボランティアに参加しました。福島市と福島市社会福祉協議会がボランティアを募集し、住民が生活する場所とその近隣のなかで比較的放射線量の高い場所を福島県内、県外から集まったボランティアが除染するというものです。学校や住居の除染は完了しつつありますが、道路や水田、公園など広範囲の除染が国や自治体だけでは進まず、そのニーズの一部にボランティアが応える形です。除染ボランティアに対して社会的にいろいろな意見があるなかで行動し続ける同プロジェクトから同行取材のご依頼を受け、土屋晶子が記者として編集チームより参加、現場を取材しました。

 

≪活動日記≫

午前10時、作業現場の大波城址に到着。かつて伊達藩の要所であった由緒ある場所での作業です。夏山へと移行しつつある山林での作業なので、繁茂する草との戦いになるか、と思いきや、すでにボランティアのために徹底した草刈りが行われていました。作業前の説明が行われた集会場では放射線積算量を計るガラスバッジのほか、防塵マスクやタオル、軍手やゴーグルなどが支給され、現場に行くと飲料水の支給や長靴洗浄用設備もあり、記者はこの日を準備された地元の方々の志に深く感謝しながら取材しました。

総勢158人のボランティアのうち、大波外部からのボランティアと大波住民は2対1の割合。班分けはあったものの、現場では皆入り混じって汗を流していました。

 

一般的に除染には、落葉拾い、除草、苔の除去や洗浄、表土の剥ぎ取り、覆土、客土、また放射線量の計測とホットスポットの発見などが含まれますが、ボランティアの作業は専門の業者の作業とは区別され、実際には落葉を熊手で掻き集め、ビニール袋に詰めて集積するところまでを担当します。現場の大波城址の斜面はかなり勾配の急なところがあり、落葉(腐葉土と化している部分が多い)の入った袋を持って移動するのは大変そうでした。kfopの皆さんが入った班は、午後はヒマワリ畑用の斜面を担当したので、木立の陰のない、直射日光の下での格闘となりました。

 

≪安全管理≫

除染現場は空間線量2.5μSv/h以下の場所が基本です。放射線被ばくの測定は、各自がビブスのポケットに入れたガラスバッジのほか、モニタリング、スクリーニングが行われました。その他、現場で水を飲むときは、うがいをしてから飲む、移動のマイクロバスには泥、土を持ち込まない、追加被ばく年間1mSv以下の管理(地元のボランティアの場合、自宅周辺の線量を考慮)などの自己管理が必要です。現場は急斜面なので、切り株など足元の状態も注意が必要です。

ところで記者は初め、装着感の悪い防塵マスクではなく、持参の小さめのサージカルマスクで取材していました。しかし、思ったより土埃はあるもので、途中から支給の防塵マスクを着用しました。「地元の方は慣れてしまってマスクをしない」とも聞きましたが、不安を感じるのも慣れるのも人間の方で、だからこそ科学的データを十分駆使して自己管理しなくてはならないのだと思いました。

 

≪運動会、ヒマワリ畑計画≫

帰りのバスから見ると、大波小学校の校庭で先生が1人、翌日の運動会のためか校庭にトラックの白線を引いていました。除染活動によってこうした子供たちの学校生活が少しでも充実したものになるのなら、それに越したことはありません。

実は、今回の除染ではkfopの入った班が担当した区域の放射線量が作業終了後上昇してしまいました。(1.64μSv/hから1.7μSV/hへ上昇。)原因は、湿った落葉、腐葉土の下には苔類が隠れていて、それが覆いを剥がされて放射線を出しているということです。しかしこのあと業者が苔類の除去を行うので、結果的には除染効果を期待できます。ちなみに今回の活動で集まった落葉はゴミ袋約2500個分でした。

 

また、前述のヒマワリ畑は、後継者不足や高齢化などで耕作放棄地が増えている大波地区の地域活性化の試みで、6月10日には種まきを行うため、現在ボランティアを募集中ということです。景観のほか種を加工してヒマワリ油のドレッシングを生産する目的があり、ボランティア参加者には昼食のとき、味噌汁と一緒にこのドレッシングを使ったサラダが振る舞われました。(地元婦人会が準備してくださいました。)記者も大変美味しくいただきました。さらに、ここで「霊山(りょうぜん)漬」という地元の漬物を紹介され、kfopの皆さんは帰り際、観光ボランティアとしてこの店舗を訪れ、思い思いの福島土産を買い求めていました。

 

≪ボランティアの声≫

kfopの26人の参加者のうち、半数以上がボランティアバスなど、かながわ東日本大震災ボランティアステーションでのボランティア経験者。登録ボランティアとしての岩手や宮城での被災地支援をきっかけに、福島へと行動範囲を広げています。その他にも、阪神淡路大震災の時から活動中、救急救命ボランティアとして活動中など、何らかのボランティア活動の背景がある場合がほとんどで、神奈川県外からの参加もあり、「この機会に福島に行きたい」との強い意向で集まったメンバーでした。つまり、目的は「福島の応援」、「福島の人々との交流」であり、その1つの手段として除染ボランティアを志したということです。帰りのバスで共有された感想の中でも「お助け隊などの計画が欲しい」、「大人数でなくてもいいので継続的に必要な支援を行いたい」、「ボランティア以外のことも思い出になり、活動に意欲が湧く」、「心を開いてもらっている感じがする」など、様々な可能性を秘めたコメントが聞かれました。

 

☆取材後記☆

「kfopの外部の人間として、客観的に」レポートするという役目で同行した記者は、五月晴れの空の下、皆さんが黙々と作業を続けられる姿にファインダーを向け、シャッターを切り続けました。情けないのですが、それだけでも結構疲労感がありました。

ボランティアの皆さん、本当にお疲れ様でした。

5時間弱の取材の後、最終的に記者のガラスバッジは4μSvを表示していました。

さて、こうして集まった落葉、腐葉土はこれからどこでどうなって「無に帰する」のか?

簡単に言えば、国が最終処分場を決めて割り当てるまで仮置き場に保管する、のです。

実はこれに関する情報公開を自粛せざるを得ず、記者は「モヤモヤしたもの」を抱えてこの記事を書いています。あまりに普通な、のどかな田園風景の残像が鮮明なだけに、この「モヤモヤ」は日に日に倍増しています。

それと同時に、「どこでも起こり得る」という感覚、誤解を恐れずに言えば「自分の住んでいるところで起こっているような」印象が強くあります。要するに日本全体の現状が異常だということですね。

自分も含まれている異常事態にどう対応していくのか?

この問いがある限り、記者は被災地・被災者支援に「どんな形でもいいから自分の責任でできる範囲で」関わり続けようと思います。

 

(記:編集チーム 土屋晶子)